湿潤環境での創傷治癒

もっとも速い時期の報告は,1958年のOdlandによる「熱傷は水疱を破らずに,そのままにしておいた方が速く治癒する」というものだった。それまでは「熱傷の水疱は早く取り除き,乾燥させないと治らない」と信じられていたのだから,当時の常識を真っ向から覆す報告だった。
 次いで1962年,Winterが豚の皮膚欠損創に対し,ポリエチレンフィルムで覆った場合と,乾燥させて痂皮を作らせた場合を比較し,前者が後者より遥かに速く治ることを報告。その後,人間でも同じ結果が報告された。ここで「傷は乾かさず,湿潤環境で治癒する」ことが確立された。 このあたりから,傷が治るとはどういう現象なのか,傷ついた組織はどのように修復されるのか,各種の細胞はどのように連携しあっているのか・・・などについての基礎的報告が相次ぐことになる。
 1970年代初め,Roveeが,湿潤環境で創周囲の皮膚から上皮細胞が移動することで上皮が再生することを証明。 その後,各種の細胞の役割,各種のサイトカイン,Growth Factorの働きが明らかにされ,基礎的研究からも「湿潤環境を保つために何かで創を閉鎖する」治療法の正しさが証明された。