これまで人類が「傷を覆う」ために使ってきた素材はそれこそ枚挙に暇がない。一番最初はおそらく木の葉・草の葉だったろう。 紀元前25世紀頃のシュメール文字の陶板には蜂蜜と樹脂を混ぜたもので傷を覆ったと書かれているし,古代エジプトのパピルスには蛙の皮膚と獣脂を染み込ませた包帯についての記述があるらしい。
医学の祖,ヒポクラテスは「感染していない傷は何かで覆わずに,乾燥させて痂皮を作ることで速く治癒する」と述べている。「傷は乾燥させる」という迷信の元はヒポクラテスだったんだな。
ローマ時代のケルズス(Celsus,炎症の4徴候を記述した人)は,新鮮外傷はワインなどで洗った後に膏薬を用い,慢性潰瘍には蜂蜜と包帯の治療を提唱。ガレヌス(Galen)はワインを染み込ませた布で傷を覆うことを提唱するなど,今日の「湿潤環境による創傷治癒促進」を思わせる治療について説明しているが,,一方で,傷に塗るものとして豚のフン,沸騰した油(!)などとんでもないことまで記述している。ちなみに以後1500年間にわたり,こういう治療法が無批判に信じられ,続けられることになる。まさに暗黒時代である。